2011年に新卒で入社した楽天グループ株式会社を、2022年の4月に退職していた。(入社当時は楽天株式会社だった。以下簡単に楽天と記す)

10年を超えるそこそこ長い期間にわたって同じ会社に勤め続けた。実はもうとっくに次の会社で働いていたりする。いまさらになって自分の思うところをここで共有することに決めたのは、主に以下のような理由からである。

  • このところずっと忙しかったので、少し立ち止まって人生を振り返る機会があっても良いのではと思った。
  • 多くはなさそうだが、こういう話を読みたい人もいるのでは、という気がしていた(根拠はない)。
  • 退職エントリというものを、人生で一度くらいは書いてみたかった。
  • HugoとGithub Pagesベースのブログシステムを設置したが、ブログシステムの記事管理の体験を確かめるために、そこに新しく書いてアップロードできる何かが欲しかった。

楽天でなにをしてきたか

2011年の3月に大学院の修士課程を修了した。翌月に新卒で楽天にアプリケーションエンジニアとして入社して以来、たまには長いものに巻かれ、たまに面白いことを自分で見つけて勝手にやったりしながら、なんとか生きながらえてきた。

所属していた部署は様々で、社内ITの部署にいたり、会員管理プラットフォームを他の開発チームに提供する部署にいたりした。主にエンジニアリング的な観点で、社内でやってきたこととしては以下のようなものであった。

  • 小さなエンドユーザ向けのサービスのバグ修正やバージョンアップやサーバ移設。
  • Atlassian社のコラボレーションツール(JiraやConfluenceなど)のシステム導入と運用。
  • スペインの子会社に研修で行ってそこでRuby on Railsでできた社内ツールのデータベース移行。
  • Jenkinsでのデプロイメントパイプラインの設計と実装。
  • Hive/HadoopベースのデータウェアハウスとETL基盤の管理と運用(実際はデータエンジニアとデータスチュワードと呼ばれるような役割を両方やっていたと思う)。

上記のように簡潔に書くとなんだかつまらなそうだが、技術的にはいろいろ面白いことをやる機会に恵まれた。たとえばまっさらなCentOSのサーバにミドルウェア入れるところからアプリケーション動かすまで全部面倒見たり、Kubernetesを立ててその上にワークフローエンジンを構築したり、部署で持っていたサービスのSLOを測る仕組みを作って、ちゃんとチームのKPIとして継続的にトラックされるように根回ししたりした。

最初は東京の本社(品川シーサイドの楽天タワー、2015年より二子玉川の楽天クリムゾンハウス)で働いてきたが、結婚しこどもが産まれ地元(京都)で働きたいと考え、2019年に大阪支社に仕事を持ったまま転属させてもらった。(この希望を受け入れてくれた会社には感謝している。)

英語大丈夫だったの?

楽天といえば、社内公用語が英語となっていることで有名である。周囲が日本語話者ばかりという状況下において英語でのコミュニケーションを強要されることはなかったが、英語ができなければ非常に不利になる人事制度になっていた。英語が辛くて退職した社員は周囲に何人もいた。

幸いなことに、私の場合は英語に苦手意識がなく、日本語を話せない人しかいないチームでもなんとなく仕事をすすめることができていた。とはいっても、英語で話している間は、日本語だけより、話したい内容が30%引きになるという感覚はあるが…

なぜ転職しようと思ったのか

決定的な理由は、楽天が社員のリモート勤務に対して積極的でなくなってきたということだった。

2020年から日本でコロナのパンデミックが始まり、楽天もそれに従って社員を原則在宅勤務としていた。それまで京都から大阪に片道1時間超をかけ通勤していたが、それが突然なくなり、子どもと過ごす時間が増えてワークライフバランスが非常に改善された。

コロナが落ち着いてもこの働き方を続けられれば嬉しいなと思っていたが、このYahooニュースの記事にもあるように、楽天の最終的な考えとしては、社員は原則として週に4回オフィスに出社しなければならないというものだった。

私は、昨年11月にこの方針が共有された瞬間に、 「無理😇」 と思ったので、そのままエージェントに登録して、転職活動を始めることにした。

転職活動

どんな会社がいいかな🤔

転職活動するにあたってどんな会社に行きたいかをまず考えてみて、出てきたのが以下の条件だった。

  • フルリモート勤務か、週1回程度以下の出社義務(かつ通勤負荷が現職並み未満)であること。 フルリモートが望ましかったが、オフィスが自宅から現職くらいの距離にあるのであれば、低頻度でオフィスに通っても良いとは思っていた。
  • グローバルでビジネスを展開することは必須であるという価値観を経営陣が持っていること。 私は「日本の世界における経済的なプレゼンスが低下する中で、日本に閉じたビジネスをしていても先細りしかないのではないか?」という問題意識を持っていて、この問題意識を会社の経営陣と共有できるか、ということを重視していた。
  • 現職と似たカルチャーを持っていること。 転職活動中にこのカルチャーの要件をまだうまく言語化していたわけではなかったが、いわゆる JTC (Japanese traditional company) とか言われている企業は自分に合わないだろうなーと思っていたので避けていた。

自分の何を売り込もうかな🤔

ビッグデータわかるしインフラわかるしDevOpsわかるしバックエンドのアプリケーションも書ける。エンジニアリード的な立ち回りもやった。英語で業務を遂行するのも問題なくできる。社内の人に適切に話をつけてチームの境界を越えたプロジェクトを進めたりもできる。

これだけ聞くとなかなかすごそう聞こえるのかもしれないが、多分どっちかというと中途半端さのほうが勝ってしまっている、と思っていた。何でもできるは何もできないのだ。

ガチな会社の採用情報に出てくる求人で、私と同じくらいの経験年数を求めているものは大抵、サンダガを何発も撃てて、オメガの撃破に多大に貢献するつよつよシニア黒魔道士を探している、という感覚をもっていた。ケアルラとファイラを両方なんとか実戦で撃てるくらいのミッドキャリア赤魔道士では決してないのである…(FF5並感)

結果

大丈夫か??こんなんで職あるのか??🤔と最初は不安であった。

とはいえ、3ヶ月ほど転職活動をして、最終的にデータエンジニアリング関連職種で2つ、SREとして1つのオファーをいただくことができた。どれも上にあげた3つの条件を全部満たす奇跡のようなポジションであった。いろいろ悩んだが、そのうち1つ、メルペイData Managerとしてのオファーを受け入れることにした。

5月に入社し、今で入社2ヶ月ちょっとになるところだが、今のところ楽しく働けている。

楽天の良かったところと良くなかったところ

この記事を読んでいる方の中で、楽天に転職を検討している人はそれなりの割合でいると思う。おそらくこういう情報が知りたいのでは、と思うので、ここに共有させて頂こう。

良かったところ

  • 世界でビジネスをして勝っていく強い意志を持っている。 この会社の意思は繰り返し社内に伝えられた。転職活動の章で説明した自分の考えとフィットしており、やりやすかった。
  • 何かイケてないところがあっても、みんなを巻き込んでそれを改善するのは歓迎され評価される。そのような改善が継続的に起こる土壌がある。 一例を挙げよう。2011年に私が入社したときに支給されたデスクトップPCは、Pentium 4と1GBのメモリを搭載していた。このスペックは当時からすでに4年落ちくらいのもので、電源を投入してからOutlookの起動が完了するのに30分もかかる有様であった。「この会社はエンジニアがこのレベルのPCで仕事するのは十分だと思っているのか…ひどすぎる…なんて非人道的…😮‍💨」 などと思っていたのだが、数ヶ月後にちゃんと希望者にはハイスペックのPCが支給され、それ以降はちゃんと俗に言う「人権的」なPCが配備されるようになってきたのだった。
  • 割とやりたいことをやらせてもらえた。 これは部署にもよる気はするが、何か新しい技術や仕組みにチャレンジすることは歓迎されていた。はやりの技術を自分で検証して使ってみたり、ということはたくさんやった。
  • たぶん年収は悪くなかった。 特にここ数年、ソフトウェアエンジニア職は、需要が供給を大幅に上回っているとされ、世界的に年収が上昇傾向にあるが、それに追いつくために全社的に給料を上げる方向になっていった。ちゃんと結果を出していたというのもあっただろうが、自分の年収もそれにつれて大きく上がり嬉しかった。

良くなかったところ

  • 会社は社員とコミュニケーションをとるのが得意でないように思える。 「人事制度を変えます」というようなときに、変える前に社員に意見を求められることはない。会社全体にかかわる重要な決定までの議論のプロセスが公開されることはほとんどない。私の転職の理由になった、リモート勤務が制限されることについては、突然社内イントラに現れた記事に決定事項として書かれていただけで、その決定の背景、理由などの説明がなされることはなかった。

さいごに

私は「リモート勤務ができなくなる」という理由で楽天を辞めたが、細かいものはあったにせよ、それ以外で致命的に嫌だと思う点はなかったように思う。もし楽天とカルチャーが合い、上記に挙げた良くないところが問題とならない方であれば、やはり楽天は転職先としてオススメな企業だと今も言えると思う。